▸病態
犬の軟口蓋は先が気管の蓋(喉頭蓋)の先端と重なるか重ならないかほどの長さが正常であるとされています。したがって喉頭蓋の先端を超えて披裂軟骨など尾側にまで進展している状態が軟口蓋過長であると診断します。主に短頭腫で多く発生することが報告されています。
▸臨床症状
一般的な臨床症状はいびきや喘鳴音で多くの場合開口呼吸を伴っています。努力性呼吸、重度であるとチアノーゼ(舌の色が青紫色に変化)、失神が見られるものがあります。
▸診断
診断は臨床症状と画像所見を基に行います。レントゲン、CT所見では咽喉頭部において軟口蓋の尾端が顕著に喉頭蓋先端よりも尾側に位置していることが確認できます。また内視鏡検査で直接咽喉頭部を観察することで診断を行います。
▸治療
最も有効な治療法は過長部の外科的切除です。重度の臨床兆候を示す場合には部屋のインドを下げ、咽喉頭部の炎症や浮腫を軽減するために消炎剤を様とします。また軽度である場合、体重減少や運動制限、適度な温度管理などが必要となります。
ベントちゃんのケース (軟口蓋切除および鼻孔拡大手術)
以前、呼吸がフウフウとしんどそうだと診察に来られた際にレントゲン検査をし、短頭種気道症候群と 判明したため呼吸が楽になるよう軟口蓋の切除手術をお勧めしていました。しばらく様子を見られていましたが、症状が重くなっているようだと相談があり、超音波メスで軟口蓋切除と鼻孔拡大手術を行いました。 入院治療を終え、元気に退院されました。現在、呼吸はとても調子がいいとのことです。
マックちゃんのケース (軟口蓋過長症)
以前よりお腹がキュルキュル鳴り、食欲にムラがあり吐く頻度も多くなってきたとのことで通院されていました。胃腸炎の治療では改善しなかった場合、短頭種気道症候群の可能性もあるので画像検査をおすすめしたこところ、飼い主様は検査を希望されました。 検査で短頭種気道症候群と分かり、超音波メスで軟口蓋切除と鼻孔拡張の手術をおこないました。
入院治療を終えて元気に退院され、術後は吐く回数が劇的に 改善され、いびきもかかなくなったそうです。
マンゴーちゃんのケース (軟口蓋切除手術、外鼻孔形成手術)
呼吸がしづらく、イビキもひどく、興奮すると失神してしまうので、他の病院で診てもらったそうですが、「手術はお勧めしません」と言われたそうで当院に来られました。
鼻孔もせまく、軟口蓋も過長だったので、超音波メス等を用いて、余分な軟口蓋の切除手術と、外鼻孔形成手術をすることになりました。 今まではイビキや激しかった呼吸音が、手術後は改善され、元気に退院されました。その後は、失神は無く元気になったそうです。
サラちゃんのケース (軟口蓋切除、両側鼻孔拡大)
以前から短頭種気道症候群(パグ、フレンチブルドッグ、ブルドッグ、シーズーなどに見られる)により、呼吸困難の症状(睡眠時のイビキ、無呼吸。失神、ガーガーいう呼吸音等)を呈していましたが、ハーモニック等で余分な軟口蓋の切除と両側鼻孔の拡大手術を行いました。 術後、呼吸はかなり楽になり、安定してきたので無事退院されました。