▸病態
慢性腸症は3週間以上の慢性的な消化器症状(嘔吐、下痢、腹痛、吐き気、食欲不振、体重減少など)を呈し、なおかつスクリーニング検査において原因の特定に至らない消化器疾患の総称とされています。発生機序としては粘膜バリアの異常、腸内細菌叢の数的・質的異常および免疫細胞の過剰な活性化などが考えられていますが、不明な点が多いとされている疾患です。慢性腸症は治療反応性から食事反応性腸症、抗菌薬反応性腸症、免疫抑制剤反応性腸症および治療抵抗性腸症に大別されます。
▸臨床症状
嘔吐、下痢、食欲不振、体重減少、粘血便や黒色便(メレナ)が認められることが多いです。
しかし、疾患の重症度や病変の発生部位によりさまざまな症状を示すことがあります。
▸診断
慢性腸症はさまざまな要因が複雑にかかわっているため、診断・治療には多くの検査、時間が必要になります。慢性腸症を診断するうえでまず行わなければならないのは、現在起こっている慢性消化器症状の原因となりうる他の鑑別疾患を除外することです。
問診、身体検査、血液検査、糞便検査、尿検査、胸腹部X線検査、腹部超音波検査など一般検査によって感染、異物、腫瘍、消化管以外の疾患(肝胆道系疾患、膵疾患、腎疾患、内分泌疾患など)を除外します。慢性腸症と疑われた場合、試験的治療や内視鏡検査および病理学的検査などを実施していくことになります。