‣病態
外耳炎はよく見られる疾患です。耳は外耳、中耳、内耳に分かれており、特に耳炎の主体となるのが外耳炎です。
軽い外耳炎では耳の内側が赤くなったり、耳の汚れや悪臭がみられます。また、耳や頭部の痒みにより頭部を後ろ脚で掻いたり、頭を頻繁に振る行動がみられることがあります。
外耳炎の炎症が強いときは、強い痛みから頭部を触られるのを嫌がったり、活動性が低下してしまうこともあります。外耳の炎症が中耳、内耳まで及ぶと、首を傾ける、まっすぐに歩けない、ふらつくなどの症状が出てきます。中耳、内耳炎になると治療が長引いたり、手術が必要になる場合があるため、早い段階での検査および治療をお勧めします。
外耳炎が起こる原因としては皮膚炎、角化異常、寄生虫性、自己免疫性疾患、免疫介在性疾患、感染症、異物、外傷などがあります。このように外耳炎の原因はさまざま存在するため、慎重に検査を行い、根本的な原因に対して治療を行う必要があります。外傷や異物による一時的な外耳炎は治りますが、生まれつきの脂症やフケ症、垂れ耳の犬、アレルギー性皮膚炎やホルモン異常などの病気が存在する場合は症状が治まった後もよい状態を維持するために治療が必要になります。また、慢性的な外耳炎や再発する外耳炎ではレントゲン、オトスコープ(耳の内視鏡)、CT検査、培養検査や病理検査など詳しい検査が必要になる場合があります。その外にも耳の中の腫瘍や慢性的な外耳炎で耳の穴が狭くなってしまっている場合は手術が必要なこともあります。
▸病態
猫の口内炎は難治性のことが多く、慢性歯肉口内炎と呼ばれるものもあります。
発症要因については現在のところ直接的な単一の要因は明らかになっておらず、ウイルスや細菌、また口腔内細菌の多様性の低下、またこれらの口腔内微生物に対する過剰な免疫反応などによる複合的な要因が指摘されています。
▸臨床症状
口腔内の疼痛、流涎、口からの出血、食事量の低下、食事中に奇声をあげる、食事を中断する、性格の変化、前肢の被毛の汚れ、口臭、下顎リンパ節の腫脹など非特異的なものが多いです。症状が進行すると、食物や水を摂取できなくなり脱水、削瘦してしまうことがあります。また口内炎を起こす疾患として猫では腎不全や糖尿病もあります。
治療には抗生剤の投与や抗炎症剤の投与、CTSレーザー照射、オゾン療法、インターキャット、歯周病の治療、消毒液による口腔内の洗浄、薬剤塗布などがありますが、これらは対症療法であり、猫の免疫力・抵抗力を上げることが根本的な治療に繋がります。
また、細菌が付着・増殖する場所である歯を抜くことで口内炎が80パーセントで改善するという報告もありますが、これらの治療を行っても難治性口内炎では完治しないということもあるため、定期的な治療や検診が必要になります。
▸病態
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は臨床的に基礎疾患や随伴疾患の有無により特発性や続発性に分類されます。続発性としてはリンパ腫や慢性リンパ性白血病や全身性エリテマトーデス、悪性腫瘍、ウイルス感染などによって見られます。この病気は免疫介在性機序によって自分自身の赤血球を破壊することで貧血が生じる病気です。
▸臨床症状
一般的に若齢から中年齢で発症すると言われており、赤血球が破壊されることによる貧血や黄疸、可視粘膜の蒼白や食欲不振などが見られます。また小さな血栓が生じることで全身循環に影響を及ぼす播種性血管内凝固が生じると死亡率も高くなります。
▸診断
血液検査による貧血の発症、血液塗抹による球状赤血球の出現、クームス検査等を組み合わせて診断していきます。
▸治療
溶血の阻止のための免疫抑制療法や血栓塞栓症の予防、貧血が重度の場合は輸血や脾臓の摘出手術などの外科的処置が選択されます。
輸血治療が適用とされる場合
1.大量出血で血液が減少してしまっている時(交通事故、外傷、腫瘍、腫瘍の破裂など)
2.血液を自分自身で作り出せない病気の時(白血病、骨髄の病気など)
3.赤血球などが壊されてしまう病気の時(免疫介在性溶血性貧血などの自己免疫系疾患、タマネギ中毒など)
4.出血を止める成分が不足している凝固系の異常(血友病、DICなど)
5.これ以外にも沢山、輸血を必要とする時がありますが、どれも重篤な病状がほとんどです。
輸血は根本的な治療法にはなりませんが、手術前の病状の改善を図っての手術、治療に反応するまでの延命、対症療法として非常に有益です。
▸病態
慢性腸症は3週間以上の慢性的な消化器症状(嘔吐、下痢、腹痛、吐き気、食欲不振、体重減少など)を呈し、なおかつスクリーニング検査において原因の特定に至らない消化器疾患の総称とされています。発生機序としては粘膜バリアの異常、腸内細菌叢の数的・質的異常および免疫細胞の過剰な活性化などが考えられていますが、不明な点が多いとされている疾患です。慢性腸症は治療反応性から食事反応性腸症、抗菌薬反応性腸症、免疫抑制剤反応性腸症および治療抵抗性腸症に大別されます。
▸臨床症状
嘔吐、下痢、食欲不振、体重減少、粘血便や黒色便(メレナ)が認められることが多いです。
しかし、疾患の重症度や病変の発生部位によりさまざまな症状を示すことがあります。
▸診断
慢性腸症はさまざまな要因が複雑にかかわっているため、診断・治療には多くの検査、時間が必要になります。慢性腸症を診断するうえでまず行わなければならないのは、現在起こっている慢性消化器症状の原因となりうる他の鑑別疾患を除外することです。
問診、身体検査、血液検査、糞便検査、尿検査、胸腹部X線検査、腹部超音波検査など一般検査によって感染、異物、腫瘍、消化管以外の疾患(肝胆道系疾患、膵疾患、腎疾患、内分泌疾患など)を除外します。慢性腸症と疑われた場合、試験的治療や内視鏡検査および病理学的検査などを実施していくことになります。
内視鏡 (誤食処置)
内視鏡 (誤食処置)