血栓塞栓症
‣病態
心臓内や血管内で血液が凝固し、それにより血流が阻害される疾患です。
この病気の7~8割は心疾患に関連して発生しており、9割程度が腹大動脈の分岐部に塞栓し、後肢不全麻痺・壊死を起こします。
‣臨床症状
血栓塞栓により筋肉の虚血性障害、末梢神経障害が起こっている影響で後肢不全、心筋症により胸水や肺水腫が起こり呼吸が荒くなるなどの症状があります。
また、激しい痛みにより叫び声をあげる場合もあります。
最も起こりうる後肢の血管以外に、前肢、内臓、脳、心臓の冠血管などどこにでも起こる可能性があり、内臓障害・脳障害が起こり、最悪の場合突然死を引き起こす場合もあります。
‣診断
レントゲン検査で整形外科的な病気の除外のための検査を行ったり、超音波検査により血管内・心臓内に血栓があるかどうか、血流が途絶えている部位があるかどうかを確認します。また、不自由な足とその他の部分での乳酸値を比較し、虚血状態の有無を確認します。
‣治療
治療は主に血栓に対する治療と血栓によって生じた痛みに対して行う治療があります。
血栓に対して行う治療は、「血栓を溶かす・除去する」、「これ以上大きくならない・新たに作らないようにする」の2つがあります。血栓溶解薬を用いたり、外科的に血栓を摘出する治療があります。抗凝固薬、抗血小板薬によって血栓がそれ以上にならないようにする治療法があります。
痛みに対しての治療は1日目は重度の痛みがありますが、2日目からは和らいでいきますが、痛み止めなどで痛みの緩和を行います。
にゃんたちゃんのケース
3日前から呼吸が乱れ、痙攣、痛みの症状が認められたため近医を受診したところ、血栓塞栓症が疑われ、当院での治療を希望のため来院されました。来院時も開口呼吸を呈しており、血栓塞栓に伴う疼痛を示していました。また両後肢不全麻痺が生じ、熱感もありませんでした。早急に酸素室での状態の安定を図り、レントゲン検査、血液ガス検査等を行ったのち、静脈からの血栓溶解薬の持続点滴により一命をとりとめました。入院当初は食欲もなく経鼻カテーテルからの強制給餌で生命維持を行っていましたが、今では自分からご飯を口にするほど容態も安定し通院しています。